外国人材の受入れ・共生に関する総合的対応策の「施策」
外国人材の受入れ・共生に関する総合的対応策の「施策」のうち、特に「円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組」と「外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制の強化」についての概要は以下の通りです。
1. 円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組
(1) 現状及び課題
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日本語教育機会の不足:約14万人の外国人住民が日本語教室がない市区町村に居住しており、日本語教育を受ける機会が十分に提供されていません。また、市区町村の約39%に日本語教室が設置されておらず、ノウハウや人員不足が課題となっています。
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社会制度理解の格差:日本語能力だけでなく、日本の習慣や社会制度の理解も重要ですが、生活オリエンテーションの実施状況や内容に地域差があり、理解度に違いが生じる可能性があります。
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外国人児童生徒への対応:日本語指導が必要な公立学校の児童生徒は約6.9万人と、この10年で1.9倍に増加していますが、「特別の教育課程」による日本語指導を受けている児童生徒の割合は依然として約7割にとどまっています。
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体系的学習の困難さ:外国人がライフステージに応じて身に付けるべき日本語レベルの基準がなく、体系的に学習を積み重ねることが困難です。
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日本語教師の質・量確保の課題:日本語教師の資質・能力を担保する仕組みが不十分であり、待遇が十分でないため、長期的なキャリア形成が難しい状況にあり、質の確保や量的確保、育成が課題となっています。
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育成就労外国人の日本語能力向上:育成就労制度において、特定技能制度への移行を見据え、育成就労外国人の日本語能力の向上が必要とされています。
(2) 具体的施策
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地域での日本語学習環境整備:地方公共団体に日本語教育推進の基本方針作成を促し、地域における日本語教育の促進と水準向上を図ります。都道府県等が関係機関と連携し、日本語教育環境を強化するための総合的体制づくりを推進し、市区町村の日本語教育を支援します。
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日本語教育の質の向上:文化審議会国語分科会で取りまとめられた**「日本語教育の参照枠」を活用**し、留学、就労、生活の各分野別の教育モデルの開発と普及を通じて、日本語教育の水準向上を図ります。また、「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」に基づき、認定審査を開始し、登録日本語教員の資格制度を円滑に運用することで、日本語教育機関の日本語教育水準の維持向上と日本語教師の能力及び資質の向上を図ります。
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日本語教室空白地域の解消とICT教材の活用:日本語教室空白地域解消のため、アドバイザー派遣、開設・安定化支援、セミナー開催を行います。また、生活場面に応じた日本語を自習できるICT教材「つながるひろがる にほんごでのくらし」(通称:つなひろ)を19言語で提供し、内容を拡充します。
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日本語能力測定テストの推進:日本語能力試験(JLPT)で培った知見を活用し、CBT形式の「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の実施を推進します。
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育成就労外国人の日本語能力向上:育成就労計画に盛り込むべき日本語能力の育成目標や内容の基準、受入れ企業へのインセンティブ方策を検討します。また、日本語教材の開発、現地日本語教師の育成のための専門家派遣、教材購入助成など、母国における日本語学習支援を進めます。
2. 外国人に対する情報発信・外国人向けの相談体制の強化
(1) 現状及び課題
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情報アクセスの困難さ:外国人が自身の状況に応じた支援情報を適切かつ迅速に選択することが困難であると指摘されています。また、国が発信する情報が読み手に配慮されておらず、情報媒体の不一致により必要な情報が届かない課題があります。
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多言語対応の不足:在留手続、納税、労働関係法令、社会保険、生活ルールなど、日本での生活に必要な情報について、分かりやすい形での迅速な情報入手や多言語・やさしい日本語化された情報提供・相談体制の構築が必要です。特にハローワーク、労働基準監督署、医療、福祉、子育て等の分野での多言語対応の充実が求められています。
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通訳確保の困難と連携不足:地方公共団体が設置・運営する一元的相談窓口では、必要な通訳の確保が困難であるという状況があります。外国人が抱える問題は複雑で複合的であるため、相談対応においては関係機関の緊密な連携が重要ですが、その体制が不足しています。
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災害時の対応:災害発生時等の非常時において、外国人の困難な状況を迅速かつ的確に把握し、時宜を得た支援策を講じる必要があります。
(2) 具体的施策
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外国人目線の情報発信強化:出入国在留管理庁は、関係者ヒアリングや「御意見箱」を通じて外国人からの意見を聴取し、共生施策の企画・立案・実施に適切に反映させます。また、「生活・就労ガイドブック」や「外国人生活支援ポータルサイト」の掲載方針を外国人目線で検討・改善し、マイナポータルとの連携も強化し、オーダーメイド型・プッシュ型の情報発信を検討・実施します。
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相談体制の強化と多言語化:地方公共団体が情報提供・相談を行う一元的窓口の整備・運営を財政的に支援します(外国人受入環境整備交付金)。これにより、多言語対応(11言語以上)や通訳の配置、多言語翻訳アプリの導入を促進します。外国人在留支援センター(FRESOC/フレスク)を拠点として、地方公共団体への支援や企業向けセミナーを開催し、地域への展開を図ります。
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AI通訳と医療分野の支援:AIによる同時通訳の実現に取り組み、重点対応言語を21言語に拡大し、翻訳精度を向上させます。医療分野では、電話通訳・多言語翻訳システム利用促進、外国人患者受入れマニュアル周知等を通じて、外国人患者が安心して受診できる体制を整備します。また、特定技能外国人には、医療通訳費用等をカバーする民間保険への加入を推奨します。
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やさしい日本語の普及促進:「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」や「話し言葉のポイント」に基づき、地方公共団体職員向けにやさしい日本語の研修を実施し、研修用教材の活用・検証、やさしい日本語の書き換え例の追加を行います。また、外国人や国民の利便性向上、相互理解促進、日本人へのやさしい日本語の認知度向上のための検討も行います。
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災害時支援の強化:防災・気象情報に関する15言語の多言語辞書の活用を促進し、アプリやホームページの周知を通じて防災・気象情報の多言語化を推進します。「災害時外国人支援情報コーディネーター」の養成を都道府県・指定都市で図ります。
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法的支援の充実:日本司法支援センター(法テラス)の「多言語情報提供サービス」(10言語)の利便性向上と言語数の確保を図り、民事法律扶助を含めた多言語での法的支援を強化します。